パレスチナとイスラエルの問題についてよく言われていて、かつ間違った認識について例を挙げて自分なりの反論をしてみた。
- とにかくハマスが悪い
- イスラエル/パレスチナ問題は複雑な宗教問題である
- イスラエルは同情すべき国である
- パレスチナとイスラエルには2千年前からの因縁がある
- 大半のイスラエル人は虐殺反対なのにネタニヤフが暴走している
- パレスチナについて理解を深めるために読んだほうがいい本
とにかくハマスが悪い
2023年10月7日のハマースによる攻撃から全てが始まったかのように語る人は多い。そうではないと説明してもしても限りなく湧いてくる。人の話を全く聞かない。私はこの手の輩を「妖怪ハマスガー」と呼んでいる。
そもそもイスラエルは、外から来た入植者たちが元いた人たちを虐殺したり追い出したりして作った国だ。それから70年以上ずっと、先住民であるパレスチナ人を殺し、抑圧し続けた。
特にガザ地区では、狭い土地に人間を囲って出られなくした。その逃げられない土地に度重なる空爆。その度に大勢の死傷者が出ている。世界でも類を見ない恐ろしい人権侵害がずっと起こっていたのをずっと無視しておいて、イスラエルが被害を受けたときだけ急に出てきて残虐だなんだと言い始める人たちは一体なんなんだろう。
10月7日の攻撃は、ずっと続いていた虐殺と人権侵害に対する報復である。イスラエルはいつでも先に攻撃して、反撃されたら被害者面をする。そして西側はいつもその言い分を鵜呑みにし、イスラエルが攻撃されるとそこを起点として話を始める。10月7日以前からずっとそうだった。
ちなみに私はハマース支持でも不支持でもない。ハマースの是非を判断するのはパレスチナの人たちであるべきで、私にその資格はない。
当然ハマースにだって問題もいろいろあるだろう。でも、全く話の通じない恐ろしいテロ組織、というイメージは間違っている。そもそも軍事部門はハマースの一部でしかないし。
確実に言えるのは、ハマースとイスラエルどっちが悪かって言ったらそれは間違いなくイスラエルだってこと。イスラエルによる侵略が一番先にあって、それがなければハマースも存在しない。それなのにイスラエルのほうがまともに見えてしまう人は、元々非白人あるいはイスラム教徒に対する強い偏見があるんだろう。それが公平な味方をするのを妨げている。
イスラエル/パレスチナ問題は複雑な宗教問題である
だから関係ない日本人が口を出すべきじゃない、がこれに続く。
これは何もかもが間違った見方だ。この問題は全く複雑じゃないし、宗教問題でもないし、日本も無関係ではない。イスラエルは宗教を口実にはしているが、これは単なる口実に過ぎない。イスラエル人とパレスチナ人は入職型植民地の加害者と被害者だ。なお、パレスチナ人にはイスラム教徒が多いが、キリスト教徒もいる。
この問題については過去に記事を書いた。
イスラエルは同情すべき国である
これはいわゆるネット右翼よりは欧米リベラルとその影響を強く受けた人たちがよく言っていること。イスラエルは迫害されてきたユダヤ人がやっとの思いで作った国である。そして今も敵に囲まれていて生存の危うい、弱い哀れな国なのだ。だから批判すべきではない。ユダヤ人にはあの土地に自分の国家を持つ権利があるという。
ユダヤ人がヨーロッパで迫害されてきた、そのことをもって、ヨーロッパとは別の場所で、何も関係ない人たちを追い出して自分たちの国を作るのがどうして正当化されるんだろう。この土地の先住民はユダヤ人を迫害していたわけでもないのに。
多分かれらはどこかでアラブ人を見下しているんだろう。同じ権利を持った人間として見ていない。ヨーロッパ白人にしか目が向いていない。でもそのことには無自覚で、自分では被差別属性の人に思いを寄せているつもりなところが厄介。
ドイツが本当にユダヤ人の迫害を反省しているなら、ドイツの一部を譲ってそこにユダヤ人の国を作ればいい。でも決してそうしようとはしない。自分たちがやったことのツケをパレスチナ人に払わせながら、パレスチナ人が抵抗すると「反ユダヤ主義者」呼ばわりする。
ちなみに、アメリカはそんなにイスラエルが好きなら、イスラエルはアメリカの土地の一部に作ればいい、と言っている人も一部にいるが、私はそれには絶対反対。
アメリカがそもそもどうやってできた国か思い出して欲しい。アメリカはイスラエルと同じ、先住民を排除して作った国だ。イスラエルに分け与えるような土地があるなら、まずは先住民に返すべきだろう。
パレスチナとイスラエルには2千年前からの因縁がある
パレスチナ人ではなくイスラエル人こそがこの土地の先住民であり、かれらは奪われた自分たちの土地を取り戻しただけ、という主張。
この主張をする人たちがハマスガーより厄介なのは、自分が人よりこの問題に詳しいと思っているところ。イスラエルを批判している人たちはこういう議論を知らないから批判しているんだ、とかれらは思っているようだ。イスラエルを批判している人の多くは、正当化の理論としてシオニストがこういう主張をしているのを知った上で、それがおかしいと言っているんだと思うが。
そもそも2000年前は自分たちの土地だったからこの土地は自分たちのもの、なんて大昔の話すぎて通らない理屈だ。イスラエル以外でそんなことを言う人間がいたら一笑に付されるだけだろう。しかもその無理な理由すら嘘。大昔に遡っても、イスラエル人はあの土地の先住民ではない。
「ユダヤ人」という宗教と民族をごっちゃにしたような呼称がこういう誤解を生んでいるんだと思う。ユダヤ人というのは本人あるいは親などがユダヤ教の信者という、それだけの意味だ。だからユダヤ人の出自は様々で、ヨーロッパ系もアラブ系もアフリカ系もいる。
イスラエルを作る中心となり、今も国の中枢にいるヨーロッパ系ユダヤ人(アシュケナージ)はヨーロッパ出身のヨーロッパ人で、パレスチナにルーツがあるわけではない。現在ユダヤ教徒なのは、ある時期に先祖が改修したから。
「ユダヤ人」と呼ばれる人々が大昔にあの土地から追い出されてヨーロッパに来た、と誤解している人が少なからずいるけど全然違うから。神話と歴史上の話をごっちゃにしないでほしい。
じゃあ元々いたユダヤ人はどこに行ったのかといえば、ずっとあの土地にいた。イスラム教なりキリスト教なりに改修して。それがパレスチナ人。
イスラエルのユダヤ人にも、古代ユダヤ人の子孫はいるだろう。アラブ系のユダヤ人はそうだと思う。そしてアラブ系ユダヤ人はイスラエル国内で、ヨーロッパから来た新参者のユダヤ教徒よりも低い地位に置かれている。由緒正しきユダヤ人として尊重されているわけではない。
この問題についてわかりやすく説明したNoteがあったので、まだ読んでいない方はこちらも是非。
【小ネタ】もし中東の3大宗教が携帯電話キャリアだったら【イスラエル問題】|bReCaG48
大半のイスラエル人は虐殺反対なのにネタニヤフが暴走している
「よくある」誤解とは言えないけど、こういうことを主張している良心的リベラル派の人は時々見るので。
残念ながら、これはダウト。
確かにイスラエル国内でネタニヤフに抗議する人は多い。でもかれらはあくまでも「反ネタニヤフ」なだけ。パレスチナ人に対する軍事行動自体はユダヤ系イスラエル人の8割が賛成しているというデータがある。
もちろんユダヤ系イスラエル人全員がそうだというわけではないし、心から虐殺に反対している人も1割くらいはいるだろう。
ただ、ほとんどのイスラエル人は善良な人たちで、ネタニヤフとごく一部のタカ派だけが暴走している、という見方は明らかな間違いだ。ごく一部の反シオニストは「普通のイスラエル人」から攻撃されて国に居づらくなり、出ていったりするので国民がますます先鋭化していっている。
ネタニヤフはイスラエルの中でもタカ派ではあるが、決して特異な存在ではない。国の由来から考えて、出るべくして出た政治家だ。
パレスチナについて理解を深めるために読んだほうがいい本
私がこれまでに読んだ本の中で、こうした誤解を解くために有効でおすすめな本を挙げてみる。独断と偏見に基づき、読みやすさを星5つまでで表現してみた。
早尾 貴紀『イスラエルについて知っておきたい30のこと』
読みやすさ ★★★★★
まずはこれ。大変わかりやすく、誤解は大体解ける。この記事で挙げているものなんかはほぼ全て。ただし特に読むべき人(デマをばらまいている人、和製シオニスト)ほどこの本を読まないのが一番の問題。
イラン・パペ『イスラエルに関する十の神話』
読みやすさ ★★★★
著者はイスラエル人で反シオニストの歴史学者。シオニズムは植民地主義ではない、イスラエルは民主主義国家である、などのよくある誤解について細かく反論していく形式。
サラ・ロイ『ホロコーストからガザへ: パレスチナの政治経済学』
読みやすさ ★★★
著者はユダヤ人でガザ地区の専門家。ガザ地区がどのようにして発展を妨げられているのかが詳しく述べられている。一部リベラルにも評価されているオスロ合意の欺瞞についてもよくわかる内容。
ヤコヴ・M.ラブキン『イスラエルとは何か』
読みやすさ ★★★
著者は敬虔なユダヤ教徒。イスラエルは世俗的な人々が作り出した国家であり、シオニズムはユダヤ教の教義に反している、といったことを語っている。イスラエルをユダヤ人の象徴とし、反イスラエルを反ユダヤと同一視するような言説がいかに誤っているかを示す本。
高橋真樹『ぼくの村は壁で囲まれた―パレスチナに生きる子どもたち』
読みやすさ ★★★★★
『イスラエルについて知っておきたい30のこと』と同じく、イスラエル/パレスチナ問題の入門書的な位置づけの本。特に、ホロコースト犠牲者がなぜパレスチナ人を迫害するのかについてのコラムは必見。
岡真理『ガザとは何か~パレスチナを知るための緊急講義』
読みやすさ ★★★★★
2023年10月に行われた緊急講義が本にまとめられたもの。この問題の歴史的経緯や10月7日以前のイスラエルの加害行為などについて述べられている。
エドワード・サイード『イスラム報道』
読みやすさ ★★
パレスチナだけでなくイスラム関係の報道全般のバイアスについて述べられた本だが、著者はパレスチナ出身のため、パレスチナについて触れられている箇所は多め。イスラム教、イスラム世界について自分が持っている偏見と向き合うきっかけにもなる。