イスラエルが先に攻撃を仕掛け、イランが反撃したらアメリカ、ドイツ、イギリス、フランスの首脳が一斉に非難した。イスラエルではなくイランの方を。イスラエルについては「自衛権」があるから正当化できるんだとか。めちゃくちゃな話だが、全く驚かない。今までもずっとそうだったから。
石破はアメリカや西ヨーロッパには追随せず明確にイスラエル側を非難した。その点についてはとても良かったと思う。
ネタニヤフは今回、イラクの核武装を阻止するために攻撃したのだと言う。イスラエルが核保有国だという事実を踏まえると、これがどんなにおかしな言い分かよく分かると思う。自分は核を持っていいがイランは駄目、ということで、しかもそれで支持を得られると思っているのがすごい。
ユダヤ人の選民思想がイスラエルをここまで暴走させた、という人もいるけど私はそうは思わない。イスラエルのこの傲慢さはユダヤ人やユダヤ教の本質ではなく、西側から甘やかされ続けた結果だ。イスラエルという国がその地に元々いた人たちを押しのけて建国されてしまったのも、イスラエルがここまで増長したのも、欧米の責任が非常に大きい。もちろん日本の責任もあるが。
イスラエルは元々ヨーロッパ的な植民地主義思想に基づいて建国された国なので、ネタニヤフだけを責めてイスラエル自体の問題を問わないのはおかしい。そしてイスラエルだけを責めて背後にいる欧米、特にアメリカ、ドイツ、イギリスを免罪するのもおかしい。
人権が大事、と口では言っている欧米がここまでイスラエルに甘いのはなぜか。イスラエルが本質的にはヨーロッパの飛び地、言わば身内だからだ。「人権」は欧米及びそれに従順な人々にのみある、という隠れたルールがかれらの頭の中にはあるのだ。こうした二重基準について自覚があるのかどうかはわからないが。そして欧米以外の国の体制を非難するための便利な道具として使えるときのみ、それ以外の人々にも「人権」が発生する。
甘やかされているとはいえ、イスラエルがヨーロッパのどこかの国を攻撃したら激しく非難されることは想像に難くない。今擁護されているのは、被害者がかれらの仲間でないからだ。
イランはアメリカに特に敵視され、悪の枢軸呼ばわりされている国だ。イランが独裁的な国だからそうなった、と思っている人も多いだろうが、それは誤解だ。
そもそもアメリカが民主主義を大事にしているなんて大嘘で、アメリカは中東の政治に介入し、時には選挙で選ばれた都合の悪い政権を潰したりもしながら、自分に都合の良い独裁者を支援してきた。
イランもそうだった。今から70年ほど前、民主的に選ばれたイランのモサデグ政権が英米に潰された。石油の国有化を推し進めようとしていたりと、欧米に従順な存在ではなかったためだ。
それに代わってできたのが英米の傀儡であるパフレヴィー王朝。一部の特権階級だけが利益を享受し、反対する一般国民は激しく弾圧される独裁政権だった。この政権に対する国民の不満が爆発し、革命が起こってできたのが今の政権。だからアメリカやイスラエルの思い通りにはならず、目障りな存在なのだ。
アメリカに追随する日本のテレビ局もイランに対する悪いイメージを植え付けることに協力している。パフレヴィーの時代を美化するような言説を広めようとする動きまで見られる。この手には注意が必要だ。
今のイランにはもちろん悪い点もいろいろあるだろうが、悪い点ばかりが強調されすぎている。イランはずっとイスラエルの挑発を受けながらも抑制的に行動しているのに、そういった姿勢を評価する声もテレビや新聞上ではほぼ聞こえてこない。
ハリウッド映画も日本のメディアも、イランだけではなく、中東全体(ただしイスラエルを除く)とやイスラム教徒について悪いイメージをばらまいてきた。その結果、明らかにイスラエルが悪いと思われる事象もどっちもどっち、あるいは攻撃される側が悪いという感覚を持つ人が多くなってしまったんだろう。
SNSを見ていたら、この状況でイスラエルを「中東で一番マトモな国」と呼んでいる人を観測してしまった。「中東で一番イカれた国」の間違いだろ。イスラエルは中東で一番ヨーロッパ的な国なのは間違いないが、ヨーロッパ的=まとも、善では全くないので。いい加減、欧米に幻想を抱くのをやめたらいいのに。